特定技能は、特に国内人材を確保することが困難な産業分野で、
一定の専門性や技能がある外国人を受け入れることを目的とした制度になります。
平成30年の出入国管理法の改正でできた、比較的新しい在留資格です。
特定技能という在留資格は、特に人手不足が深刻であった介護、建設、外食業などで外国人の受け入れを容易にするもので、
人材確保につながると期待されてきましたが、実際、その総数は、コロナの影響がありながらも、着々と増えてきており、
新型コロナ感染対策による入国制限が緩和されれば、さらなる増加が見込まれるところです。
具体的な数字を挙げれば、出入国残留管理庁の「特定技能在留外国人数の公表」によれば、
各産業分野別の特定技能1号の在留外国人の数は、次のように推移しています。
その数は、コロナによる入国規制がなされていた期間中でさえ、爆発的に増えていることが分かります。
令和5年6月末 |
令和4年12月末 |
令和4年6月末 |
令和3年12月末 |
|
総数 |
173,089 |
130,915 |
87,471 |
49,666 |
介護分野 |
21,915 |
16,081 |
10,411 |
5,155 |
ビルクリーニング分野 |
2,728 |
1,867 |
1,133 |
650 |
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野 |
35,641 |
27,725 |
17,865 |
9,802* |
建設分野 |
18,429 |
12,768 |
8,492 |
4,871 |
造船・船舶工業分野 |
6,377 |
4,602 |
2,776 |
1,458 |
自動車整備分野 |
2,210 |
1,738 |
1,220 |
708 |
航空分野 |
342 |
167 |
79 |
36 |
宿泊分野 |
293 |
206 |
160 |
121 |
農業分野 |
20,882 |
16,459 |
11,469 |
6,232 |
漁業分野 |
2,148 |
1,638 |
1,050 |
549 |
飲食料品製造業分野 |
53,282 |
42,505 |
29,617 |
18,099 |
外食業分野 |
8,842 |
5,159 |
3,199 |
1,985 |
*「素形材産業分野」「産業機械製造分野」「電気・電子情報関連産業分野」合計
数だけでいえば、どの分野も増加していますが、特に、「介護分野」「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」
「建設分野」「農業分野」「飲食料品製造業分野」の実数増が目立ちます。
実数の多さでいえば、飲食料品製造業分野53,282人(30.8%)が最多で、
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野35,641人(20.%)、介護21,915人(12.7%)、農業20,882人(12.1%)と続きます。
特定技能には、特定技能1号と特定技能2号の2種類があり、
特定技能1号は「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」、
2号は「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」とされています。
スタートとなるのは、特定技能1号です。
特定技能1号では、特定技能測定試験に合格するか、技能実習から移行する形の2種類の流れがあります。
まず、特定技能においては、各業種の職種ごとに技能試験があり、それぞれの試験に合格することで技能要件を満たすことができます。
もうひとつ、特定技能測定試験に代わる要件として、技能実習から移行する形があります。
技能実習2号を良好に修了していることと、技能実習の職種・作業内容と特定技能1号における業務に関連性が認められなければなりません。
特定技能で雇用するための要件につきましては、こちらのコラムでも解説をしております。
より詳細を確認したい方は、本記事をご確認ください。
日本人の採用の場合と同様のプロセスはあるのですが、それと共に、
外国人に就労させるために要求されるビザ等の手続もあり、その流れは特有のものとなります。
求人を行う前までにしておくべき段取り(業務内容の要件確認、事業所の要件確認人材の要件確認)、
人材募集のプロセス、内定段階、内定後の支援計画の策定・ビザに関する手続・その他必要となる手続に分けて考えることができます。
以下、順に見ていくことにしましょう。
特定技能で労働者に労働させることができる分野は、次の12業務に限られています。
介護:身体介護およびこれに付随する支援業務。訪問系サービスは対象外。
ビルクリーニング:建物内部の清掃
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業:機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理
建設:土木、建築、ライフライン・設備
造船・舶用工業:溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、電気機器組立て
自動車整備:自動車の日常点検整備、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随する業務
航空:空港グランドハンドリング(地上走行支援業務,手荷物・貨物取扱業務等) と、航空機整備(機体,装備品等の整備業務等)
宿泊業:宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供
農業:耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別等)、畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等)
漁業:漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵,安全衛生の確保等)、養殖業(養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理・収獲(穫)・処理、安全衛生の確保等)
飲食料品製造:飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く)の製造・加工,安全衛生)
外食業:外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)
今回募集しようとしている外国人労働者が従事する業務が、上記のいずれかに該当するかを確認しておくことが必要です。
産業分野だけでなく、その外国人が担当する業務範囲が指定されている範囲に収まっているかも問題となります。
一般的にいって、特定技能では、技人国ビザなどとは異なり、かなり広く外国人労働者が担当できる業務が認められています。
例えば、レストランで働いてもらいたいといった場合、技人国ビザによる場合は、
外国人の母国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする場合や、
大学や専門学校で学んだ当該技術もしくは知識の関連する業務でなければならないため、
レストランチェーンのWEBサイトやパンフレットの作成、本社でのマニュアル作成などに限られることになります。
また、単純労働とみなされる清掃、ベッドメイキング、荷物運び、配膳などは技人国の在留資格では認められません。
これに対し、特定技能で認められる業務の範囲は一般的に幅広く、ここでも飲食物調理、接客、店舗管理などの
外食業全般の業務を担当することが認められています。
とはいえ、分野ごとにできることの詳細については決められているため、事前に確認することは不可欠です。
以上のような検討を経て、いよいよ募集、ということになるわけですが、ここでも注意すべきポイントがあります。
特定技能は、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に
従事する外国人向けの在留資格であるとされています。
「相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務」という以上、一定のレベルが要求されることになります。
特定技能1号の場合、特定技能測定試験に合格するか、技能実習から移行する形の2種類の流れがありました。
まず、各業種の職種ごとに技能試験があり、それぞれの試験に合格することで技能要件を満たすことができます。
日本語の能力も問題となります。日本能力試験N4レベルの結果を取得することが必要になります。
技能実習から移行する形もあります。技能実習2号を良好に修了していることと、
技能実習の職種・作業内容と、特定技能1号における業務に関連性が必要です。
以上のような検討を経て、求人票を作成し、募集開始です。
その労働者が特定技能の要件を満たしているかを確認するため、試験合格の裏付け資料の確認、在留カードの確認などを行います。
特定技能に限らず、日本人の雇用契約の場合と異なるのは、後にビザが取得できなかった場合の規定をおくことです。
通常は、必要となるビザが得られることを停止条件とした契約、
すなわち、ビザが得られなければ効力が発生しないといった内容の条項を設けます。
雇用契約を締結したら、健康診断を実施し、受入れ機関等による事前ガイダンス等を行います。
特定技能人材を雇用する際には、特定技能人材の日本での生活をサポートするために
法令で定められた支援を行わなければなりません。これを支援計画といいます。
支援計画の実行は、受入れ機関の支援責任者、支援担当者が行うことになりますが、
自社での支援が難しい場合には、登録支援機関に委託をすることが可能です。登録支援機関は、
出入国在留管理庁の認可を得なければならず、特定技能外国人の受け入れに関する総合的なサポートを担当する存在となります。
以上の準備が整ったら、ビザを申請することになります。
対象となる外国人が海外にいて、これを招く場合には、在留資格認定証明書交付申請を、
留学、他企業からの転職、技能実習生から切り替えるといった場合には、在留資格変更許可申請をすることになります。
基本的には、申請人である外国人本人が申請人の住居地を管轄する入管に行うことになりますが、
申請人が海外にいる場合には、申請人外国を受け入れようとする機関の職員その他の法務省令で定める者が、
代理人として申請を行うことも可能です。
実は、受入れ要件として検討が必要なのは、採用の対象となる外国人労働者だけではありません。
その外国人労働者が就労することを予定している事業所が、その産業区分に該当していることも必要になります。
また、事業所が受入れ可能な状況にあることも必要です。
・労働,社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守していること
・契約締結の日前1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
・契約締結の日前1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により、外国人の行方不明者を発生させていないこと
・欠格事由(5年以内に禁錮以上の刑に処せられていないこと・出入国または労働法令違反がないこと等)に該当しないこと
など、会社側で満たさなければならないポイントもいろいろあります。
特定技能で雇用するための要件につきましては、こちらのコラムでも解説をしております。
より詳細を確認したい方は、本記事をご確認ください。
雇用契約の内容については、適切性が要求されます。例えば、ごく一部例を挙げると、
・所定労働時間が通常の労働者の所定労働時間と同等であること
・報酬額が、日本人が従事する場合の報酬額と同等以上であること
・外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、
差別的な取扱いをしていないこと
といった点を満たす必要があります。
支援計画に記載が必要な事項には、次のようなものがあります。
・在留資格認定証明書交付申請前又は在留資格変更許可申請前に、
労働条件・活動内容・入国手続・保証金徴収の有無等について、対面・テレビ電話等で説明
・入国時に空港等と事業所又は住居への送迎
・帰国時に空港の保安検査場までの送迎・同行
・連帯保証人になる・社宅を提供する等
・銀行口座等の開設・携帯電話やライフラインの契約等を案内・各手続の補助
・円滑に社会生活を営めるよう日本のルールやマナー、公共機関の利用方法や連絡先、災害時の対応等の説明
・必要に応じ住居地・社会保障・税などの手続の同行、書類作成の補助
・日本語教室等の入学案内、日本語 学習教材の情報提供等
・職場や生活上の相談・苦情等について、外国人が十分に理解することができる言 語での対応、内容に応じた 必要な助言、指導等
・自治会等の地域住民との交流の場や、地域のお祭りなどの行事の案内や、参加の補助等
・受入れ側の都合により雇用契約を解除する場合の転職先を探す手伝いや、推薦状の作成等に加え、
求職活動を行うための有給休暇の付与や必要な行政手続の情報の提供
・支援責任者等が外国人及びその上司等と定期的(3か月に1回以上)に面談し、労働基準法違反等があれば通報
・支援責任者及び支援担当者の氏名及び役職等
・支援の実施を契約により他の者に委託する場合の当該他の者の氏名及び住所等
・登録支援機関(登録支援機関に委託する場合のみ)
特定技能の場合の在留資格の申請に必要となる書類は、他の場合に比べて比較的多くなります。
申請人である外国人に関して必要となる申請書、技術水準や日本語能力の水準を示す書類、報酬に関する説明書、
雇用契約書の写し、雇用の経緯にかかる説明書、徴収費用の説明書、支援計画書などの他、受入れ機関に関する書類は、
法人の場合と個人事業主の場合、初めて特定技能労働者を受けれるのか否か等によっても異なり、
加えて、外国人労働者が就労することになる分野に関する必要書類も分野ごとにさまざまです。
申請してから審査に時間がかかる場合もありますので、早めに準備を進めることをこころがけましょう。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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