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2023.10.26
新規入国再開により急増中!特定技能で外国人を雇用するための要件とは?入管法に精通した弁護士が解説

在留資格「特定技能」とは

特定技能という在留資格は、日本で人口も減少し人材不足が問題となる中で、特に国内人材を確保することが困難な産業分野で、

一定の専門性や技能がある外国人を受け入れることを目的とした制度になります。

平成30年の出入国管理法の改正でできた、比較的新しい在留資格です。

 

技能実習生よりも就業開始までの期間が短く、転職も可能であることから、特定技能ビザを目指す人が増えると見込まれ、

特に人手不足が深刻であった介護、建設、外食業などで外国人の受け入れが容易となり、人材確保につながると期待されてきましたが、実際にその数は順調に増え、今や企業にとっては労働者としての重要な選択肢の一つになりつつあります。

 

特定技能には、特定技能1号と特定技能2号の2種類があり、特定技能1号は「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」、2号は「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」とされています。1号は12分野、2号はかつては限定的に対象分野が指定されていましたが、現在ではそれが拡張され、介護を除く11分野が指定されています。

 

 

制度概要

特定技能という在留資格は、国内人材の不足という問題がある中で、初めて外国人労働者の受入れを認める制度として設けられました。このような観点から、他の在留資格に比べて、就労可能な範囲は広く、単純労働を含む業務を行うことができるという特徴があります(ただし、単純労働をメインにすることはできないので、注意が必要です)。

 

特定技能として受入れ可能な業種は全部で12種類で、特定技能1号では、在留資格を更新することで最長5年、特定技能2号では実質的に無期限の就労が可能となります。従来、特定技能2号の適応業種がわずかに2種に限られていたため、制度として利用しにくい面がありましたが、2023年の大きな制度変更の一環で、特定技能1号が認められるほとんど全ての業種において、特定技能2号が認められるに至っています。

 

 

在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」の定義

特定技能1号

特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格

 

特定技能2号

特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格

 

対象分野

特定技能で受入可能とされる12の職種は、次の通りとなります。

 


 

介護:身体介護およびこれに付随する支援業務。訪問系サービスは対象外。

 

ビルクリーニング:建物内部の清掃

 

素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業:機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理

 

建設:土木、建築、ライフライン・設備

 

造船・舶用工業:溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、電気機器組立て

 

自動車整備:自動車の日常点検整備、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随する業務

 

航空:空港グランドハンドリング(地上走行支援業務,手荷物・貨物取扱業務等) と、航空機整備(機体,装備品等の整備業務等)

 

宿泊業:宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供

 

農業:耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別等)、畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等)

 

漁業:漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵,安全衛生の確保等)、養殖業(養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理・収獲(穫)・処理、安全衛生の確保等)

 

飲食料品製造:飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く)の製造・加工,安全衛生)

 

外食業:外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)

 

 

特定技能の区分は、時により変動します。2022年5月25日から、3分野に分かれていた製造業の受入れ可能分野が,

「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」として1つの分野へと統合されています。

 

注目すべきは、特定技能2号の受入可能範囲の拡大です。

2022年以前は「建設」と「造船・舶用工業」の2職種だけしか認められていませんでしたが、

2023年に対象分野が拡大され、在留資格として「介護」がある「介護」を除き、

特定技能の1号の認められるすべての分野につき、特定技能2号が認められるに至っています。

2号の試験については、2023年秋から実施されるとされています。

 

 

特定技能2号のメリットは、認められる期間だけではありません。

永住許可に関するガイドラインでは、永住権を申請する要件として10年の在留が必要となりますが、

この10年には技能実習や特定技能1号での在留期間はカウントされないのです。

 

特定技能2号の枠組みが広がることの影響は大きいといえます。特定技能1号と特定技能2号では、さまざまな違いがあるからです。

 

 

特定技能1号と特定技能2号の違い

技能レベル

まず、それぞれで要求される技能のレベルが違います。1号では、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能が想定されているのに対して、2号では、特定産業分野に属する熟練した技能が必要とされます。1号2号とも、基本的に試験でその技能が確認されますが、技能実習1号を良好に修了した外国人は特定技能1号では試験等が免除されることになっており、これも両者の関係を示すものと言ってよいでしょう。

 

日本語レベル

次に、日本語能力のレベルも異なります。1号では、日本での業務や生活に要する日本語能力があるかを試験等で確認されますが、2号では、原則として、試験による確認は要りません。

 

家族の帯同

また、外国人労働者に取って、また、外国人労働者を確保しようという企業にとって、家族の帯同が許されるかは重要なポイントになりますが、1号では家族の帯同は一部の例外を除いて許されません。例外となるのは、留学生であった者の場合で、留学生の扶養家族が家族滞在で日本に在留していた場合には、特定活動ビザで在留が可能になります。以上に対し、2号では一定の要件を満たせば配偶者や子の帯同は可能とされています。

 

支援業務の実施

また、特定技能1号では、外国人支援が必要です。受入れ機関が外国人労働者を支援するか、受入れ機関が登録支援機関へと外国人労働者の支援を委託するかです。受入れ機関とは、外国人を受け入れる企業・団体のことで、特定技能外国人が円滑な業務・生活を行えるように支援計画を作成し、実施しなければなりません。過去2年間外国人従業員がいない場合は登録支援機関へ委託することが必要です。以上に対し、特定技能2号では、支援計画の策定実施は不要とされています。

 

 

技能実習との違い

制度目的

これら特定技能と技能実習とでは、そもそも制度の目的が異なります。

 

国内人材を確保することが困難な産業分野で、一定の専門性や技能がある外国人を受け入れる特定技能制度は、外国人労働者に労働してもらうことが前提です。これに対し、技能実習制度は、開発途上国への協力という国際貢献のために設けられた在留資格であり、日本で学んだ技能を母国に伝えるための制度であることから、外国人を労働者として扱うことは認められていません。

 

このため、特定技能制度では前述した12業種とそれぞれの業種で認められた職種で就労可能とされるのに対して、技能実習制度では、認められた158の作業のいずれかで技能実習をすることが可能であり、認可を受けた技能実習計画に沿った活動のみが認められており,従事させる作業まで細かく規定されています。

 

外国人労働者のサポート機関

特定技能にしろ、技能実習にしろ、外国人労働者をサポートする機関が必要です。特定技能では、登録支援機機関がこれに当たります。特定技能制度で定められた外国人への支援業務を自社で実施できない受入れ機関の代わりに、支援業務をする機関です。技能実習の場合には、監理団体がこれにあたり、入国前後のフォローや、受入れ機関への監査や訪問などを通して、技能実習の適正な運用実現を図ります。技能実習生は海外の送り出し機関と提携している監理団体からの紹介しか、受入れることができません。

 

転職の可否

転職の可否にも差があります。特定技能制度では,職種ごとに設けられた,技能要件を満たす限りは転職が認められており、同じ業種・職種の機関への転職は認められますが,別の業種・職種の機関への転職は、特定技能の技能試験に合格して,技能要件を満たしていない限り、認められません。これに対して技能実習制度では、基本的に転職が認められていません。

技能実習は3号まで変更することにより、最長5年まで在留が可能ですが、実習生は技能評価試験を受け、合格しなければなりません。2号移行は学科と実技、3号は実技の試験が実施されます。

 

かつては、技能実習生は、実習期間が満了した後は、学んだ技術を母国に伝えるという制度理念通り、自国に帰るしかありませんでした。それが、特定技能制度が作られたことにより、技能実習生が特定技能に切り替えて、日本での在留を続けることができるようになりました。これも特定技能制度による大きなメリットと言えます。技能実習と特定技能1号を併せれば、この時点で、最大で10年間の間、外国人を受入れすることも可能というわけです。

 

 

特定技能ビザを取得・申請するための要件【外国人編】

要件① 技能要件

特定技能1号では、特定技能測定試験に合格するか、技能実習から移行する形の2種類の流れがあります。

まず、特定技能においては、各業種の職種ごとに技能試験があり、それぞれの試験に合格することで技能要件を満たすことができます。

かつては、日本国内での受験対象者は、「中長期在留者及び過去に中長期在留者として在留していた経験を有する方」などに限られていましたが、令和2年から、「在留資格を有する者」として在留資格をもって在留する方については一律に受験を認めることとされたため、一気にチャンスが広がっています。即ち、過去に中長期在留者として在留した経験がない方であっても、受験目的で「短期滞在」の在留資格により入国し、受験することが可能となりました。

 

要件② 技能実習からの移行

上記の特定技能測定試験に代わる要件として、技能実習から移行する形があります。

技能実習2号を良好に修了していることと、技能実習の職種・作業内容と、特定技能1号における業務に関連性が認められなければなりません。

 

要件③ 日本語要件

日本能力試験N4または国際交流基金日本語基礎テストでA2レベルの結果を取得することが必要になります。技能実習時と異なる業務を行う場合でも、技能実習2号を良好に修了すれば日本語試験は免除されます。

特定技能2号については、特定技能1号を取得し、特定技能2号の試験に合格して移行することになります。

 

 

特定技能ビザを取得・申請するための要件【企業編】

要件① 受入れ機関の適切性

特定技能労働者を雇い入れる受入れ機関については、特定技能外国人を保護し、制度自体の運用を健全なものとする観点から、厳しい要件が定められています。まず、受入れ機関自体が適切であることが求められます。具体的な要件については、後ほどご説明しましょう。

 

要件② 雇用契約の適切性

特定技能制度では、原則として、外国人と受入れ機関が直接雇用契約を締結することになりますが、その契約内容につき、さまざまな要請があります。こちらについても、具体的なところは後述します。

 

要件③外国人の支援体制があること

過去2年間に中長期在留者の受け入れ又は管理を適正に行った実績があり、かつ、役職員の中から、支援責任者及び支援担当者を選任していることなどといった細かい条件が設定されていますが、受入れ機関が、支援については登録支援機関に全部委託する場合には、検討の必要はありません。登録支援機関とは、受入れ機関との支援委託契約、支援計画に基づく支援の全部の実施を行う会社をいいます。

 

要件④外国人の支援計画の適切性

外国人を支援するための計画を「支援計画書」として作成し、入管に提出しなければならないとされ、必要な記載事項も定められていますが、こちらについても、受入れ機関が、支援については登録支援機関に全部委託することが可能です。

 

 

特定技能ビザを申請する際に注意すべきポイント

これまで見てきた通り、特定技能ビザの要件は非常に複雑である一方、書類に不備や違反があると、場合によっては不許可や許可取り消しなどの重い結果につながる場合もありますので注意が必要です。また、申請の方法や審査の方法は業種や管轄省庁によっても異なることがある点も念頭におく必要があります。

 

また、受入れ企業に要求される法令遵守、支援体制の確立などのため、それ相応の準備が必要です。

再申請といった事態に陥らないよう、万全の準備をして望みましょう。

 

 

分野別の要件をしっかり理解する(協議会加入等)

特定技能外国人の受入れをするには,受入れ機関が特定技能協議会へ加入する必要があります。協議会とは、特定技能制度の適切な運用を図るため、一定の産業分野ごとに所管省庁が設置する機関で、所管省庁・受入企業・業界団体・関係省庁等が構成員となっています。

この協議会は、特定技能外国人の適正な受入れ及び保護及び企業が必要な特定技能外国人の受入れができる体制作りを目的として設置されたもので、特定技能外国人を雇用する企業は、この協議会への加入が義務付けられている場合があります。加入が義務か否かは分野により異なります。

 

各分野ごとに、それぞれ協議会があります。介護分野であれば「介護分野における特定技能協議会」、農業分野であれば「農業特定技能協議会」などです。

 

加入時期についても注意が必要です。一般的には、特定技能外国人の初回の受入れから4か月以内に加入すればよいのですが、建設業、製造業や自動車整備業の場合には、雇用前の加入が必要であり、分野によって扱いが異なります。

更に、建設分野では別途の規制があります。協議会への加入だけではなく、建設特定技能受入計画を作成し、国土交通大臣に対して申請を行い認可を受ける必要があるのです。

 

申請にかかる期間を把握し、余裕を持った申請を行う

特定技能ビザの申請には、他のビザに比べて、長く時間がかかる傾向があります。採用活動を始めてからカウントすれば、実際の就労開始までに6ヶ月程度かかることもあります。日本人を雇用する場合とは異なり、採用後にすぐに就労できるわけではないことを念頭に置いて、時間に余裕を持った進行を考えておくことが重要です。

また、これまでご説明してきたように特定技能ビザの申請は非常に複雑です。書類作成や申請に時間をかけてしまうと、特定技能外国人の受け入れ体制の準備にしわ寄せがくる可能性があることも要注意です。

 

企業の申請要件の厳格なチェック

特定技能ビザを申請するための要件として、受入れ機関の適切性、雇用契約の適切性、とさらりと書かせて頂きましたが、実際にはこれらの点に関する企業に対する審査は非常に厳しい物があります。

まず、受入れ機関の適切性が認められるためには、次のような点をクリアする必要があります。

 


・労働,社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守していること

・契約締結の日前1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと

・契約締結の日前1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により、外国人の行方不明者を発生させていないこと

・欠格事由(5年以内に禁錮以上の刑に処せられていないこと・出入国または労働法令違反がないこと等)に該当しないこと

・契約締結前5年以内に技能実習生の実習認定を取り消されていないこと

・契約締結前5年以内に出入国または労働法令に関する不正行為がないこと

・契約締結前5年以内に暴力団員等であったことがないこと

・特定技能外国人の活動内容に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと

・外国人等が保証金の徴収や違約金契約等をされていることを受入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと

・支援に要する費用を外国人に負担させないこと

・労働者派遣の場合は、派遣元が当該分野に係る業務を行っている者などで,適当と認められる者であるほか,派遣先が一定の基準に適合すること

・労災保険関係の成立の届出等を適切に履行していること

・雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること

・報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと

・特定産業分野に特有の個別に定める基準を満たしていること


 

雇用契約の適切性については、次の通りです。


・相当程度の知識若しくは経験を必要とする技能として省令で定める技能を要する業務に従事させるものであること

・所定労働時間が通常の労働者の所定労働時間と同等であること

・報酬額が、日本人が従事する場合の報酬額と同等以上であること

・外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的な取扱いをしていないこと

・外国人が一時帰国を希望した場合、必要な有休休暇を取得させるものとしていること

・労働者派遣の場合は、派遣先や派遣期間が定められていること

・特定産業分野に特有の個別に定める基準を満たしていること

・外国人が帰国に要する旅費を負担できないときは、受入れ機関が負担するとともに出国が円滑になされるよう必要な措置を講ずることとしていること

・受入れ機関が外国人の健康の状況その他の生活の状況を把握するために必要な措置を講ずることとしていること


 

雇用後の労務管理・支援体制の整備

雇入れができたからといって安心はできません。雇用後も、受入れ機関が果たすべき義務があります。

外国人と結んだ雇用契約を確実に履行することは当然として、外国人への支援を適切に実施することや出入国在留管理庁及びハローワークへの各種届出も必要になります。即ち、受入れ機関は、特定技能外国人に関する受入れ人数、活動の内容、場所、報酬の支払状況、報酬金額、離職者数等について定期的(3ヶ月ごと)又は随時出入国在留管理庁長官に対し報告する義務を負っているのです。

 

 

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ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

特定技能ビザの取得を検討されている企業様は、まずは専門家に相談のうえ進めていくことをおすすめします。

 

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